講談社の電子出版の印税15%は適切かどうか | 日々だらくだるく

講談社の電子出版の印税15%は適切かどうか

漫画家「講談社から『印税は15%な』と一方的な提示された。話し合いもないのかよ!」 :アルファルファモザイク

概要
鈴木みそ「講談社から話し合いも無しに単行本の電子化の話が一方的にあった。印税は15%」
2ちゃんねらー「15%ってwww Kindleは70%だぜwww ガラパゴス乙www」
(注:原作者にも10%いくらしいので、印税は全部で25%)


数字だけ見れば、世界の電子出版に比べ講談社の設定した印税率は明らかに低いのは間違いありません。
なぜこんな数字になってしまうのか。

ここで「出版社なんかが中間搾取するからだ!」と言ってしまうとそこまでなので(中間搾取はそうなのですが)
いろいろ分析してみたいと思います。

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1、コスト
まあ、まずはコレですね。
Kindleなんかは基本的には著作者任せで、会社がやることといえばサーバー管理と著作権精査くらいなもの。
それでいて売れる量がとんでもないですから、1出版あたりの出版コストはべらぼうに安くなるでしょう。

一方日本はというと、まだ紙信仰が強いですから電子書籍端末はあまり売れず、ケータイコミックが多少売れている程度。1冊当りのコストは高くならざるを得ません。
また、従来の本で関わっている印刷や流通なども既得権益と称して電子書籍出版に関わってくるので、全体的なコスト自体も高くなってしまいます。

日本らしいというかなんというか。
もっと身軽な体制に出来ないものかと…

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2、日本のマンガ業界の体制の問題

おそらくこっちの方がでかいと思われます。
鈴木みそ先生本人の漫画でそのへんが突っ込まれています。
コミック 銭 1巻 (Beam comix)/鈴木 みそ
¥651
Amazon.co.jp
日本の漫画雑誌は基本的に赤字です。雑誌単体で黒字が出てるのはジャンプくらいなものでしょう。
ページ数に対してあまりにも安すぎ、かつ広告料も取れないため黒字になる要素がほぼありません。
ジャンプだけは圧倒的な実売数でなんとかなってますが…

で、この赤字を埋めるのが単行本なわけです。

ページ単価が高くなり1冊当りの利益率が段違いなため、雑誌に比べると損益分岐点は非常に低くなります。
単行本がそれなりに売れてくれれば、「宣伝としての」雑誌は大成功!ということになるわけです。


当然ながら、この「雑誌の赤字を埋める」役目として、電子出版も期待されていると思われます。
つまりは、雑誌の赤字分がコストとして電子出版にも計上されていると考えられるわけです。

もちろんこれは従来の電子出版にはなかったコストであり、出版社は自分たちの取り分を他の電子出版より多めに設定することになります。そうでないと赤字が埋まりません。
その分、著作者には割を食ってもらう、と。

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「単行本で雑誌の赤字を埋める」というビジネスモデルは、その作品を独占的に刊行できるという権利があったおかげで成り立つものでした。
漫画家も出版してもらわなければお金がもらえませんでしたので、それに従っていたのです。逆らえば、他から出版しようとしても流通や販売のほうに根回しされると大変ですから。

しかしながら「出版、流通、販売」を無視して著作者が書籍を販売できる方法ができてしまいました。それが電子出版。
出版業界はここも自分たちで支配しようとしていますが、インターネットはグローバルです。日本での威光も役に立ちません。
仕方が無いので漫画家の方に手を回してきた、というのが現状のようです。


漫画家も雑誌に載せてもらわなければ作品が有名になりませんので、現状では従わざるをえないでしょう。
しかし有名漫画家が

単行本の売れ行きが一段落したら、複製権自分に戻して(もしくは出版許可を切って)外国の電子書籍会社から出すよ!

と言っても、雑誌側も「その人の作品が載っている」ということは大きな宣伝効果があるわけで、載せるのをやめることは出来ないでしょう。
いずれは新人などにも伝播し、外国の電子書籍に合わせて印税率を上げていかないと立ちいかなくなると思われます。

まあ、今のうちに殿様商売やってればいいんじゃないですか?買わないですけど!(ぁ